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もういくつ寝ると、、、
年の瀬になると決まり事のように、あっという間の一年だったと会話が飛び交います。
皆さんがこの記事を読む頃は、もうお正月の準備が始まっているかもしれません。
そんな忙しい最中ではありますが、あえて提唱します。年末年始は着物を着て過ごしましょう!

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藤代TIMESを読んでくださっている方々は、少なからず着物に興味がある人だと思います。
実際スタジオでお会いするお客様でも、ご自身で着物を着付けてご来店になるママさんがチラホラいらっしゃいます。
女性はまだ着物の文化が残っていますね。
お洒落に敏感な女性は着物もおしゃれ着として認識されています。
洋服と和服、どちらも着こなすとお洒落の幅が広がりますね。
しかし、これがパパさんとなるとご自身で着付けてこられる方はほぼ皆無です。

大半の人は、
「着物は高尚なものだから、、、」「着てみたいけど自分では着付け出来ないから、、、」
と思っているのではないでしょうか。
もちろん、お祝い事やお出かけ用にはキチンとした着付けがあります。
でも考えてみてください、少し前の時代の人は、
朝起きてチャチャッと着物を着て、日常の家事や仕事をこなしていました。
「着物」とは「着る物」。当たり前のことですが、
毎日着物を着ていた時代があるのです。(着物しかなかったのですけどね)

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ワタクシは、今は一年中着物を着ていますが、男性が着物を着ることは、
女性が着物を着るよりもさらにハードルが高いですね。
着る手間は女性の着物よりも圧倒的に簡単なのに、不思議な話です。
実際私が着物を着始めたのは大学卒業後間もなくでした。
よくありがちな卒業式での晴れ着ではなく、
ある日気まぐれでウールのアンサンブルを古着屋で1000円で手に入れたことが始まりでした。
見よう見まねで帯を結び、恐る恐る街を歩き、、、
男性が着物を着て歩いているのって、余程目立つらしいです。

決まって「今日はお教室ですか?」「芸事を嗜んでらっしゃるのですか?」と聞かれます。
ただの着物好きだった私はそれが億劫になり、次第に着物を着なくなりました。
当時の私は結局、お祭りやらお祝いの席やらと、当たり前の着方しかしなくなっていました。
人は誰しも「大義名分」がないと勇気が出ないものなのですね。

阯、莉」繧ソ繧、繝繧ケ繧兔2015.01.01.jpgいつかの初詣。大雪だったのでトンビコートに編み上げブーツ。

では、本題に戻ります。
この年末年始は日本中が否が応にも日本っぽくなる期間なのです。
どこのスピーカーからは雅楽が流れ、街は紅白の幕で飾られ、
TVでも芸能人がこぞって着物を着ています。
着物を着る「大義名分」が溢れています。
これはチャンスですね。正月三ヶ日のハレのお出かけは正装の着物を着るとしても、
その他の日は普段着の着物を着てみる絶好の機会です。
帯結びが覚束ない?それなら羽織やコートで隠したり、
最近じゃ大判のショールを羽織って隠しても良いですね。

なにも外出しなくても、家でのんびり過ごすために着物を着てみるのも良いかもしれません。
何はともあれ、着てみなきゃわからない良さ、着慣れてはじめて分かる良さというものがあるのです。
タンスに仕舞われっぱなしの着物、年末のボロ市で安く手に入れることの出来る着物、
古いもので良ければいくらでも安く手に入ります。
実際古い着物の方が味があって良かったりもします。
これらを入門編として、着物をオシャレの一環として取り入れてみてはいかがでしょうか。
堅苦しいこと抜きで、純粋に着物を楽しみましょう♪

阯、莉」繧ソ繧、繝繧ケ繧兔2L_161117_130049.jpg先日のお出かけ。中が地味だったので女性物の着物コートを羽織って明るく。

阯、莉」繧ソ繧、繝繧ケ繧兔2L_161117_130918.jpg意外と困るのが履き物。最近のお気に入りは倉敷の丸五さんで出している「たびりら」。

再びワタクシ事で恐縮ですが、その後あまりに着物が着たいために、和の習い事を始めました。
街で声をかけられても、本当に芸事をしているのだから、堂々と着物が着られるようになりました。
(考えてみれば変な話ですけどね、普通に着ればいいのに。)
いまでは紋付袴から野良着まで、何でも着ます。物さえあれば仕組みは同じですからね。

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(動きやすい着物を追求するとこのように。学んでいる古武術の稽古着とあんまり変わらないとも・・・)

着物で一年中過ごすようになると、いかに日本の服装が日本の気候に合わせて作られてきたのかが理解出来ます。
同じ形の着物を、一枚、二枚、三枚と気候に合わせて重ねていく。素材が変わっても形は同じ。その分、発想は無限大です。
実は、形が同じなことをよいことに、ちょっとした和裁のまねごとをして、
女物を男物に仕立て直したりして着ていました。
人に売る物ではないのだから、不完全なら不完全なりに自分の着こなしでカバー出来ます。
古い着物を集めていると、そういう「自家製ルール」の着物に頻繁に巡り会います。
そういう曖昧さこそが良くも悪くも日本人の感性だと考えると、
布を纏って結ぶだけという古来から続く日本の文化が大変いとおしく感じられます。

さあ、この機会に着物を楽しみましょう!

(文と写真:三好 祐司)